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長野県財政への提言日本共産党長野県議団 はじめに 「長野県財政改革推進プログラム」(2003年2月策定)は、「新たな社会・経済システムの構築に向けて、中長期的な展望の下に納税者の視点から県の財政構造、県行政のあり方そのものを改革し、持続可能な県財政を構築すること」をめざすとともに、財政再建団体への転落の危機を回避する目的で「財政改革」をすすめてきました。しかし今年度、国の「三位一体」改革により、国庫補助負担金の廃止や削減、地方交付税の大幅な削減がされ、予想を大きく超える歳入不足が生じ、やむを得ず改定することになりました。 日本共産党県議団は、「財政改革推進プログラム案」が公表された翌年の2003年1月8日に、「県民本位の財政改革」の提言を発表しました。 このなかで県財政の危機を招いた「根本的な原因は、自民党政府が本来地方自治体に必要な財源を保障してこなかったことと、地方自治体の財政を大型公共事業に誘導してきた国の地方財政のあり方にあります。そして、前(吉村)県政と旧オール与党勢力が、この国の方針に追随して大型開発、大型公共事業優先の県政を進めてきた結果、莫大な借金をつくりました。」と指摘し、今回のプログラムは、「公共事業に対する財源配分の割合を引き下げて、福祉、環境、教育、産業・雇用といった重点配分を中心に、県民生活を重視した事業に重点的に財源を配分する」方向は、「私たちの考えとも一致するものです。」と評価しました。 日本共産党県議団は、この間の「財政改革推進プログラム」の実行に基づき、田中県政の財政政策を検証し、新たな県財政改革のための「提言」を発表します。 皆さんご意見・ご要望をお寄せください。
1、 国民犠牲の小泉自公政権の「三位一体」改革 (1) 2004年度地方財政への深刻な影響 小泉自公政権が進めている「三位一体の財政改革」の目的は、国民が求める大型公共事業の見直しや、新たな借金の発行を抑制する国民本位の財政再建の方向とはまったく異なり、政府の政策の失敗による地方財政破綻の尻拭いを、地方に押しつけ、その上社会保障や年金制度を「改悪」し、国民負担を増大するもので到底受け入れられるものではありません。 政府は、「三位一体改革」の初年度にあたる2004年度地方財政計画で地方交付税及び臨時財政対策債を突如、前年度比12パーセントという大幅削減を強行してきました。この影響はあらゆる面に及んでいます。 県財政への影響額は280億円の財源不足であり、市町村財政への影響は、マイナス379億円(東御市除く116市町村)です。 各自治体では基金の取り崩し、事業の先送り、人件費の抑制、公共料金の引き上げなどによってしのいでいます。 いま自治体が、福祉や教育、地域経済を元気にする施策など、自治体本来の仕事に取り組めるような財源の充実をはかる政治に転換することが求められています。そのうえで、地方財政を拡充するための施策がとられなければなりません。そのためには、福祉や教育などの国庫補助負担金制度は守り改善し、税源委譲をすすめるとともに、地方交付税の財源保障・財政調整の機能の拡充が必要です。 (2) 地方からの反撃 このような政府の強引なやり方に対し、地方からの反撃が始まっています。 全国はもとより長野県においても、2月24日には、長野県地方6団体による「『三位一体改革』と地方財政の確立に関する緊急要望書」を政府に提出しました。 県議会をはじめ県下の地方議会から地方交付税削減を見直すために国に提出された「意見書」は70自治体(7月時点・自治労連まとめ)となり、過半数を大きく超えます。 また、8月27日には長野市において「地方自治体財政危機突破県民集会」が開催され、約1千人が参加しました。「連合長野」や県経営者協会の参加は注目されます。 新年度の政府予算編成にあたり、全国知事会として3兆2千億円の国庫補助金削減と地方財源の移譲を提案したなかで、田中知事が全国同一水準で義務教育を行うことが国の責務であることから義務教育の国庫補助金の廃止に最後まで反対したことは、おおいに評価すべき点であります。 にも関わらず、政府は2005年度予算においても、地方交付税等の削減を既定路線とし、地方財政は一層の困難さを増すばかりです。 引き続き国の理不尽な財政政策に反対するとともに、県民世論を盛り上げて長野県から県民の立場に立った「地方財政のあり方」を発信することが求められています。
(1) 「プログラム」の基本方向を堅持する 長野県は2003年2月に「財政改革推進プログラム」を策定し、2002年(平成14)から2006年(平成18)までの5年間を「財政改革推進期間」に設定しています。 現在、「推進期間」の途中ですが、先ほどから述べているような、国の地方交付税削減等の影響により、「財政改革推進プログラム」の改定が余儀なくされたのです。 従って今回の改定は、全面的変更ではなく、基本的な方向は堅持し、県民の目線で前進面は今後も促進しつつ、問題点を改善するという立場で行なうことが大事です。その際、大切なことは県民参加で改定を進めるということです。県政の主人公は県民であることを貫くことです。県は説明をするだけでなく、双方向型の意見集約の場を設けることです。県民集会や懇談会等を計画することを提案します。 (2) 財政運営における前進面と問題点 前吉村県政は引退する前の10年間で約1兆円もの借金を増やしました。その結果、田中知事が県政を引き継いだ時期である2001年度の県債残高は1兆6,439億円にもなっていましたが、2004年度末には1兆6,173億円(266億円の減額)となる見込みです。借金の9割にあたる土木・農林等の公共事業による借金である普通債でみると、同時期に1兆5,625億円が1兆4,268億円になり、実に1,357億円も借金残高が減り著しい変化がみてとれます。借金の発行額(県債発行額)と借金返し(公債費)の関係を、2000年度決算と2004年度の当初予算でみると、県債発行額は1,136億円が951億円に減り、公債費は逆に1,530億円から1,670億円に増えています。このように着実に借金依存体質からの脱却がはかられてきました。 公共事業の中身についても、公共事業の入札制度改革や事業そのものの見直しがすすみ、ダムや砂防ダムの無駄な支出にメスをいれてきたことは評価できます。大規模開発型の公共事業重視から、国の規格ではない1・5車線道路の建設等生活密着型の公共事業に転換し、入札制度の改善や、小規模建設業者の入札参加の拡大、建設業の構造改革への支援も進んでいます。 投資的経費は4,491億円(1998年度)が、1,697億円(2004年度)に減りましたが、そのなかでも森林整備予算は増えています。また、教育施設の予算は投資的経費全体の減額率37.8%に較べ、76.8%と緩和しています。 東日本で唯一突出した予算を使っていた同和事業を、予定していた期限を前倒しして廃止しました。 外郭団体の見直しがすすみ、今後の県財政の負担の軽減につながるものと期待されます。 事業のなかの無駄の洗いだしや見直しは、業務内容を熟知している職員が、職場から提案できるように意識改革をすることが必要です。 また、県民の側からの指摘や、積極的提案が求められています。 限られた予算のなかでも、県民要望と、粘り強い運動を受けとめた予算配分が行われてきました。 福祉重視の観点から、「長野モデル創造枠予算」を確保し、県内の「宅老所」は現在100ヶ所に設置され、身体・知的・精神の3障害者総合支援センターを10圏域に開設、松本児童相談所の移転・機能充実というように、高齢者・障害者・子育てなど弱者対策が前進し、30人規模学級が実現しました。 一方で、県職員の定数削減をすすめ、労使合意のうえに人件費(月例給)を期限付きながら5%から30%という全国トップクラスの減額を行っています。一般行政職のラスパイレス指数は全国最低となりました。 しかし、寒冷地手当を労使の合意なく一方的に議会に提案するという手法は、各方面から問題ありの声が多く、県議会においては継続審議となっています。 職員は「改革」を共に進めるパートナーであり、その専門性を県民の福祉向上に役立てる責務をもつ自治体労働者です。 職員の働く意欲を促し、安心して職務にうちこむことのできる条件を整備することが知事としての任務です。 また、業務の民営化が推進されていますが、営利を目的とした民間企業の論理を、公務労働に同じようにあてはめることは住民の暮らしを守るという自治体の役割を投げ捨てる危険があります。 さらに管理職に導入された「業績管理制度」は、県民に目を向けるより上司に目が向いてしまう制度であり、チームワークが大事な公務サービスに重大な支障をきたすことが予想され、見直しを求めます。
2004年2月の「中期財政試算」によれば、このまま推移すれば2005年度には基金が底をつき、2006年度には財政赤字がマイナス398億円になり財政再建団体に転落することも想定されます。 この危機的状態を回避し、厳しい財政運営のなかでも、県民や県職員に正確な情報を伝え、ともに「改革」を進める姿勢になってもらうよう呼びかけることが重要です。
3、 日本共産党県議団の財政提言 「財政改革推進プログラム」の改定にあたり、次の方向を日本共産党県議団は提言します。 (1) 歳入の確保 歳入面の2000年度と2004年度当初予算比較では、地方交付税が2,865億円から2,418億円に減っています。公共事業で借金をしても交付税で国が面倒をみてくれるとの見通しは、交付税削減で保障されません。何よりも国の地方交付税削減の攻撃や、税源移譲を先送りし、義務教育補助金廃止に強く抗議し、許さない姿勢を貫くことです。 歳入の確保は、消費税率アップではなく景気回復による税収アップと大企業への適正な課税を行うこと、道路特定財源を一般財源に活用することを強く国に求めるべきです。国の行う公共事業の無駄と不要な事業を提案し、県の負担金の軽減をはかることです。 個人・法人県民税の県税収入の落ち込みが県財政を困難にしていることから、「産業活性化・雇用創出プラン」の促進など、雇用創出と地域経済の発展こそが、県税収入を確保する保障であり、その対策に県の役割が求められています。
(2) 福祉・教育・雇用を重点に 田中知事は今年の6月議会の議案説明のなかで、「今後、従前にも増して福祉・医療、教育、環境に予算を傾注投資」すると言明しました。 まさに限られた予算であればこそ、この方向を具体化することが求められます。 この間県財政は、社会保障に1,289億円、公共事業に4,784 億円(1996年度)から、2004年度現在では社会保障に1,289億円、公共事業1,656億円となって、社会保障の比重が高くなってきました。今後も、この格差を縮めることが求められます。 そのため、「長野モデル創造枠」予算を活用し、高齢者の「待機者ゼロ宣言」や宅老所の拡充等による介護と予防の基盤整備の促進。障害者施策の一層の充実。乳幼児医療費の窓口無料化の早期実現。県単福祉医療とウイルス肝炎助成制度の充実・堅持。児童虐待防止の体制の充実等が求められます。 教育の分野では、30人規模学級の拡充は県民の願いです。小・中・地域高校に拡大するために、市町村との協力・連携は欠かせません。教育環境の整備は、修理・修繕が中心で地域の雇用にも役に立つので、「登録者制度」の創設等で仕事起こしをすすめるべきです。 この間、「産業活性化・雇用創出プラン」の着実な遂行とともに、全国的にも先進的な試みとして若年就業サポートセンター「ジョブカフェ信州」(松本市)と長野市に支所を創設し、コンサルタント事業の拡充で実際に青年の雇用相談の進展が図られています。 各地方事務所で障害者や母子世帯の就職相談にのる「求人開拓員」も貴重な存在です。県が行える雇用対策は限界もありますが、今日、県民要望のトップが「雇用・景気対策」(8月24日付「中日」)となっており、一層「雇用創出プラン」の推進、企業リストラにより被害を受けた勤労者への支援等をすすめることが重要です。 国の悪政のもとで、年金制度の大改悪やさらなる国民負担増の医療制度改悪、介護保険と障害者支援費制度の統合が企まれています。連続した改悪により社会保障制度は破綻に瀕しているもとで、各種公共料金の安易な引き上げなど県民への負担は極力抑える努力を求めます。 「県財政改革」といって、必要以上の職員削減や働く意欲を失う「組織改革」は行うべきでなく、福祉・教育等の県民サービスに直結する分野は職員を増員し充実すべきです。賃金カットの見直し、寒冷地手当問題への対応については、労使による合意づくりへの努力が重要です。 任期付き幹部職員は、必要性を県民に明らかにし、県職員にはない専門性に着目した採用と配置にとどめ、職員を育てる努力を尽くすべきです。 (3) 公共事業の見直しと産業起こしを 田中県政は、これまで借金とその返済による県財政への負担が増大する公共事業を見直し、ダムなどの大型公共事業から生活道路の整備など生活密着型の公共事業に中身を転換してきました。予算の重点化にふさわしく道路の維持・補修予算の確保を求めます。 入札制度改革により、ダンピング問題が顕在化してきましたが、今までの落札率99%というような「談合」というべき状態はなくなりました。さらに透明性を高めること、事業の無駄を改革することが必要です。 公共事業費が過去の水準に戻ることはないなかで、建設業の構造改革支援策の充実が求められています。その成功が地域経済の活性化と雇用の確保、しいては税収の面でも寄与することになります。 第一次産業を大事にしない国の政治のもとで、農林業は厳しい状況におかれていますが、地産地消の促進、生産者価格保障制度の充実等の農業施策の発展が必要です。特に林業では、森林整備予算を今後も増額し、これから収入源となる県内木材の普及・活用の本格支援が求められています。 中小企業の活性化こそ地域経済の元気の源です。産業活性化政策の着実な推進が求められます。 (4) ひき続き借金をつくらない努力を 田中県政になり借金(県債)は当初予算に計上するだけで、補正予算で積み増しをすることがなくなったため、県債残高は確実に減ってきました。あと1〜2年が借金返済(公債費)のピークで、あとはみるみる返済額が減少すると予測されます。一方、国の借金の地方への肩代わりとなる臨時財政対策債の返還も生じることはあるものの、県債の返済ピークがすぎた後の財政展望についても明らかにすることが求められます。 一部に財政健全化債という借金に頼るような意見もありますが、長野県においてはこれに頼ることなく、財政再建をはかり、この面でも地方財政のモデルとなる取り組みが期待されます。 起債制限比率全国ワースト1の岡山県は、財政健全化債により財政改革に取り組みましたが、「本来は臨時的な地方債であるべき財政健全化債や退職手当債の発行が常態化し、赤字分を借金で穴埋めする体質が定着してしまっており、後年度へ負担を先送りし、財政の硬直化に拍車をかけている」との反省を述べ、「財政健全化債など臨時的な地方債発行を極力縮減する」という方針(「第3次岡山県行財政改革大綱」より)です。このような教訓を生かす必要があります。
県民は、県政の福祉・医療、教育、環境、雇用重視の施策を支持するとともに、「財政再建」への期待も高いのです。 しかし、自民・公明政権のもとでの地方財政危機は、ますます深刻なものになってきています。県財政の現状や打開のために、知事・県職員はもとより文字通り県民参加の取り組みにすることを呼びかけます。 日本共産党県議団は、財政再建をすすめながら県民本位の県政の一層の前進のために、県民の皆さんとともにがんばる決意です。 (2004年9月10日) (参 考)
(県の予算書から引用)
(出所:「県財政の現状について」経営戦略局財政改革チーム)
(出所:「県予算の状況」より)
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